東京珍道中
1,東京ベルト事件
9月23日、秋の三連休2回目の初日、私たち夫婦は早朝に車で家を出て、東京に向かいました。日本ジャズボーカルの大御所・中本マリさんのもとで、ボーカルのレッスンを受けている門下生の発表会を聴きに行くためです。うちのボーカル、早苗ちゃん(春山早苗)も1年ほど前からレッスンに通っていて、これはぜひとも応援に行かねば!というわけです。発表会ではこれまた日本ジャズベースの大御所・私の大好きな米木康志さんがバックを演奏なさるとのことなので、私としては米木さんに会うのも大きな目的でした。
その日、朝10時半過ぎ、当日宿泊予定の青山・アジア会館に到着。前日から東京入りしていたうちのベース、奥ちゃん(奥泉和也)と合流しました。その日、発表会は吉祥寺で、早苗ちゃんの出番は2時半くらいだから、まず新宿まで行ってビール飲んで、それから吉祥寺行けばちょうどいいね、ってことだったのですが、奥ちゃんが「ベルト忘れてきてやぁ。ジーパン下がってくんなや」と。ずり落ちるジーンズを押さえて妙な動きをする奥ちゃんと、とりあえず地下鉄で新宿へ。最初の仕事はベルト探しとなりました。しかも探すと案外みつからない。奥ちゃんの妙な動きや、時々見えるおなかに大笑いしながら、やっと新宿ルミネの中に無印良品を見つけたどり着いたものの、奥ちゃんの「高い!ベルトにこんな出してらんね!ヒモでいい!」の一言で却下。じゃあ、ひも探す?とか言いながらルミネを出て数歩歩いたとき、我らがGUを発見!無事、ヒモではなくベルトをゲットできたのでした。いやー、GUはありがたい!
2.ライオンビアホール
GUを出て、奥ちゃんの足取りも正常になり、勘に頼りつつ少し歩くと、「新宿ライオン」がありました。日本中どこへ行っても「銀座ライオン」だと思っていたので、へーと思いましたが、中身は安心の銀座ライオン。コースターにも「銀座ライオン」って書いてありました。ビールはもちろん、頼んだメニューのすべてがおいしい!どんどんビールが進みます。と、奥ちゃんとうちのピアノ・有地は、いつもの流れで「日本酒飲みてな」「ビアホールで日本酒あっかな」「あるんでね?(メニューを見て)あったあった!スミマセン!日本酒!熱燗できますか?」と…。この二人はいつもこんな感じです。そして出てきた徳利に「ビアホールで熱燗飲めるなんて最高だな!」と盛り上がるのでした。もう二人ともテロテロ。私もワインでご機嫌。超満足感に包まれながらライオンを後にし、吉祥寺に向かいます。
3.中本マリさん門下生発表会
吉祥寺のライブハウス・サムタイムは、歴史を感じさせる素晴らしいお店でした。私たち3人が着いたのは発表の前半が終わる少し前。演奏を上から見下ろせる2階席に通されました。前半が終わり、休憩に入るとすぐ、私たちのところに米木さんが来てくださいました。米木さんは加茂水族館でもバーChiCでも何度も演奏しているし、私は個人的にも連絡を取らせていただいているのですが、お会いするのは夏以来です。その米木さんが「今日は緊張してねー」と。米木さんいわく、一生懸命レッスンを重ねてきた生徒さんたちの年に一度の大切な発表会だから、自分が間違ったりしたら生徒さんに申し訳なくて、普段の演奏よりもずっと緊張するとのこと。なんていい人なんでしょう!米木さんくらいの大物になると緊張なんかしないと思っていたのに、生徒さんたちへの優しさを感じずにはいられませんでした。そしてこの会話の中で早苗ちゃんへのお褒めの言葉もいただき、私たちも大感激!
さて、後半がスタート。その二番手が早苗ちゃんです。早苗ちゃん、さすが!落ち着いて2曲しっかりと歌いこなしました。早苗ちゃんがジャズに転向してから、こんなに短期間で、こんなにちゃんとしたジャズを歌えるようになったのだから、早苗ちゃんの努力にはもちろん、マリさんのご指導にも感謝です。米木さんのベースソロも入り、ウルウルせずにはいられませんでした。
そして生徒さんたちの発表のあと、マリさんが三曲歌ってくださいました。適度にアルコールが入って気分が高まっていたこともありますが、もう、マリさんの底から響くような歌と、米木さんの渋いベースに涙が止まらなく…こんなすごい演奏が聴けるなんて!本当に来てよかった!
感動に包まれたままサムタイムを出て、今度はうちのピアノとベースが時々演奏しに行く、錦糸町のセッション・バー、ジェイフローへ。
4.ジェイフローでのあれやこれや
私には初めてのジェイフローでしたが、結構お客さんが多くてちょっとビックリ。そんな中、山形からいらしていた女性ピアニストがいました。時々ピアノのレッスンで東京に来ていて、レッスンのあとジェイフローでセッションに参加してから新幹線で帰るのだそうです。みんなすごいですね、その努力が。まさかこんなところで山形県人が集うとは!というわけで、みんなで写真を撮ったりして、プチ山形県人会になりました。
その日は若手のプロミュージシャンのほか、演奏者が何人か来ていたのですが、その中に小学校2,3年生くらいの女の子がいました。お父さんと思しき男性と、ドラムのスティックを握りしめて出番を待っているようでした。正直、なんとなく場違いのように感じてしまっていたのですが、いざ演奏が始まると、とにかく上手い!リズムは正確だし、周りの音を聴いてるし。その前にドラムを叩いていたオジサンよりずっと上手いのです。あの子はきっと近い将来、「天才ジャズドラマー」としてテレビで紹介されることでしょう。
ジェイフローは、うちの有地的には馴染みの場だったのですが、マスターが奥ちゃんにばかりちゃんと挨拶して自分にはつれなかったと、結構傷ついたようで…東京から帰る車の中でも、何度もブツブツ言ってました。仕方がないよ、奥ちゃんは有名人なんだから!
5,その日の終わりに
台風が東京に近づいていて、ジェイフローから青山に戻った時は大雨。午前中のうちに青山で目をつけていた餃子屋さんで1日のしめくくりをしました。「餃子とビールは文化だ」という看板を掲げたお店です。賛同せずにはいられない。
おいしい餃子を食べながら、今日1日の出来事に笑い、涙しつつ、本当に楽しく過ごせたことをしみじみ感じた3人でした。結局1日中、ずっと飲んでた……。